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びびる#1 牙の紋章 / 夢枕獏 / 祥伝社 より引用 これから、独りになる作業を始めなければならない。 精神の内部からあらゆる繋がりを、断ってゆくのだ。 ひりひりしていた。 ひりひりしているのは背中のどこかのようでもあり、脳のどこかであるようでもあり、胸のどこかであるようでもあった。 ささくれている。 恐怖感もある。 逃げ出してしまいたい恐怖だ。 自分は、なぜ、こんな所に立っているのか。 試合をやめて帰りたかった。 土下座をしてでも、それで許してもらえるのなら、やめたいと思う。 しかし、逃げるわけにはいかない。 自分は、逃げた自分のことを、一生覚えているだろう。 その自分の視線に、耐えてゆけるわけはなかった。 自分の意志では逃げられない。 しかし、自分の意志でないものによって、この試合が中止になるのなら―― 今、火事でも起きれば、試合は中止になる。 火事でなくてもいい。 相手が病気になるのでもいい。 いや相手でなくてもいいのだ。 この自分が、何かのはずみで、試合が始まる前に、誰もが納得するような怪我をするのでもいい。 また、同じことを考えている、と思った。 試合の前は、いつも同じだ。 いつも、逃げ出すことを考える。 怖いからだ。 しかし―― わかっている。 その恐怖感は、バネに変わる。 その恐怖感を、バネに変えることができるのだ。 怖いときには、その恐怖を消そうとはせずに、それをエネルギーに変えるのだ。 背を這い上がってくる恐怖を、背のどこかでエネルギーに変えるのだ。 しかし、その恐怖のコントロールをわずかでも間違えたら――それは、自分にとって最大の敵になる。 5月21日のTVインタビューから『 魔裟斗 』 「試合は怖いです。帰りたいですね。帰れるんなら」 「でも、これを目標に今までやって来たわけですから」 |
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びびる#2 戦闘機乗りは怖い。負ければ死ぬ。 スーパー・ゼロ / 鳴海章 / 集英社文庫 より引用 「危険な賭けみたいな生き方をしてきたはずだ。中東、北朝鮮爆撃、いつでもあんだは自分の生命ぎりぎりのところにいたはずだ」 那須野は笑った。 「教えてやろう。戦闘機乗りってのは、絶対に勝ち目のない戦いの日には、あっさり尻尾巻いて逃げるんだ。肝心なのは、翌日も空に上がることなんだよ」 ![]() F15発進前の大窪 F15イーグル: 実戦配備から30年以上たった今も最強といわれる戦闘機。 航空自衛隊は、この戦闘機(F−15C と F−15D)を約200機配備している。 航空自衛隊での呼称は、F−15J と F−15DJ。 配備された中、8機を除き他はライセンス生産。 世界中で、F−15 を生産したのはアメリカと日本だけ。 配備先は、千歳、百里、小松、築城、新田原の各基地の計9飛行隊。 航空祭などでの、F-100エンジン2基の迫力は圧巻。 |

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びびる#3 これは“びびる”! 切なくて、哀しくて、怖い ・・・・ 京極の世界。 京極夏彦 嗤う伊右衛門 / 中央公論社 ・・・・ 伊右衛門様とお岩様です――と男は言った。 伊右衛門は。 嗤っていた。 余茂七は手を合わせ、意味もなく、ただはらはらと泣いた。 |

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びびる#4 これも“びびる”言葉 ・・・・ 生きることの厳しさ ・・・・ 司馬の世界。 >> 俄(にわか) 司馬 遼太郎 講談社文庫 より抜粋 ─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─ 「知恵より大事なのは覚悟や、と。覚悟さえすわれば、知恵は小知恵でもええ、あとはなんとかなるやろ」 「思えば俺も間違うとった。一ツ才覚だけで世を渡ろうとしたのが料簡ちがいや」一度使った才覚は一度だけ古くなるものだ。 何度も使えばすりきれて使いものにならなくなる。 「才覚は天神祭りの花火と同じやなあ」、同じ趣向の花火が続け様にあがれば客が飽くのだ。 飽けば客が散る。 俺は毅然として世に立つべきだ、という自分への欲求がつよい。 「死ぬの?」 「人間、生きていることがそもそも不思議やのに、死ぬことがわかるかい」 「人殺しに行くのに、おのれだけ生き延びようという料簡では相手の眉間の蚊アもたたけんわい」 「水をしぼって固いところを持ってゆかんと戦場で逃げられてはかっこうが悪い。まあもう2,3日待つ」 「相場師の目は、片一方が近眼で片一方が遠眼やないといけまへん」 「見通しというのは利口や阿呆の仕事やおまへん。情緒(こころ)を殺して非人間にしてはじめてできることでごわす」つまり、いかなる勢力にも好き嫌いをおこさず、水のように冷々淡々と世界をながめてはじめて観測ができる。 稀代の利口者でも物事に愛情を生ずればそれにひきずられ、遠見がきかなくなったり、やぶにらみになったりするのだ、と大文字屋はいう。 |


